四つの流れと図書分類法


目次

四つの流れと図書分類法

概要図の42の区分要素を一つ一つを丁寧に説明して伝えるにはどうしたら良いか?
本論のテーマは専門分野の新たな発見というより、既存の知識の体系をヒントに私たちが生きている世界を見直す視点の提示だ。

私たちは何か?どうなるのか?この答えを知る手がかりは誰もがすでに手に入れている。しかし、それらのバラバラの認知を統合する脳の仕組みは持っていない。脳の注意の仕組みのせいだ。
バラバラの経験、記憶、知識、意識や望みは人の身体の中で結びついているのは確かだ。どんな風に?その答えが概要図で示されていると言える。

バラバラの知識・経験・記憶・意識や望み、複雑な世界。この有り様を如実に示しているのは言語化、文章化された知識の形態の一つである図書の多様性だ。
図書の大分類表を見ても人の興味や知識の広さが分かる。
一方で、概ねそれらの分類によって人の知性の表現形態の枠組み、限度が明らかになっているとも言える。決して狭いとは言えない膨大な書籍群(現代においてはITのビッグデータも含まれるだろう)も概ね10の類に分けられて収まるのだ。

この知識群は、例に漏れず共通の遺伝子構造を持つヒトの脳によって認識され、文章化されたものである。だからこそ、過去の数え切れないほどの多くの人々の経験や知識の結晶とも呼ばれる書籍や文章を私たちは今でも受け取れるのだ。
この過去の偉大な知識人や膨大な経験の束である書籍の山と私たち一人ひとりを結びつけているものは何か?それは知識を受容するための共通の器を持っていることなのだ。
これは当たり前に思えるが、人に共通する知性の体系を形成するための基礎があることを確認したい。それは遺伝子という設計図に従い形成された私たちの身体であることに疑いはないだろう。

更に一歩踏み込もう。図書の10の分類として現れた私たちの知性の有り様とは何なのか?これは私たちを知るための大きな手がかりだ。
同じ身体を持つ、今を生きる人類全体にとっての祖先が生み出したものだから。

私たちを知る手がかりとして「知識」「学問」そのものを取り上げる試みが本項で示したいことだ。人にとって「知る」ことは何かという問いにも向き合うことになるかも知れない。

人の膨大な知識の山はどのような体系を形成しながら、私たち人から生まれたのか?
早速結論を述べると、私たちの認知の有り様は、今のこと・過去のこと・未来のこと・現実、以上の4つの分類に全て収まる。これが4つの流れ理論の基礎だ。
最後の「現実」という認知が最も分かりづらいだろうが「今のこと」とは区別される大きな知識体系を作っている。

さて、本題の知識の体系の有り様を手がかりに私たち自身を知る作業に取り掛かろう。
上述の4つのことを人は知りたいと望み、それを行動に移し、知り得たことを文章として遺した。それが図書、書籍だ。

人は誰でも望みを持ち、それを叶えるために行動をする。
個人にとっての行動とは、常にその時その人の目の前で起こるものだ。今、その時の望みを叶えるために起こす行動。
人の知りたいという関心は「今私が起こす行動によってどのように望みを叶えるか?」という問いに集約される。これが図書分類の「社会科学」「産業」に該当する知識群である。
この知識分野は、主に現在から未来にかけて起こす行動によって望みを叶える方法を記したものだ。社会科学は人をより良くコントロールするための方法が、産業は物や食料をより良く多く生み出すための方法が示されている。
真摯に「今」に向き合うための知恵である。

次に、人の関心は「過去」にも向く。これ程人の関心を集める事象はないとさえ言えるだろう。
過去を知りたいという望み、探求した結果も書籍として残されることになる。代表的なものは歴史である。人の知りたいという望みは過去から現在に繋がる事象に対して向けられる。
知るための眼差しは現在から過去へ向けられることから、過去に関する記録が膨大に遺されることになる。遺された図書の分類は「歴史」「言語」「芸術」「文学」「技術・工学」となる。
ここに収まる図書カテゴリーが最も多くなる理由は上述した通り。記録する営みそのものが概ね過去に向けられるものだからだ。
「技術・工学」が「産業」の知識区分で求められる方法論と区別される理由は「技術・工学」は過去に積み重なった成功の記録を意味する知識分野だからだ。その知識を元に産業が行われるのは言うまでもない。

次に、「未来」を知りたいと言う望みの結果として築かれた知識群は図書分類「自然科学」になる。人は事象を支配する法則を知りたいと望み、未知や未来を知る手掛かりを求めたのだ。

そして、最後の「現実」とは?
人は現実(本当のこと)を知りたいといった漠然とした、根源的な望みを抱いている。この望みは当然に今・過去・未来へ向けた知識欲へと派生してゆくものだが、知りたいという欲の根源は現実という確固たる重い像に向けられている。
言い換えると「真実」とか「原理」などになるか。
お分かりの通り、この現実に該当する知識分野は「哲学・思想・宗教・心理学」になる。

こうして4つの区分に人の知識の有り様の全てが収まったところで、何となく分かった気にもなれる。だが更に踏み込んで、この4つの知識欲がどのようにして同じ遺伝子を共有するヒトと呼ばれる生物群の身体内に収まっているのかを示す体系に迫ってみたい。
要は4つの知性の区分同士が繋がり一つの身体内に収まっている構造についてだ。

これを一つの概要図にまとめて示した。これが本論を通じて表したいことの現時点での到達点だ。
これをもとに、人が自分をもっと深く知ることができるようになれることを期待している。誰もがこの4つの知性の体系を身体内に持っている。だからこそ、人全体に共通の問題に取り組むための叩き台になるのではないか。
夢は膨らむがまずはここまでを一区切りするつもりだ。(2022/11/28)

42区分における学問分野とwikiの引用について

概要図で42の区分ごとに既存の学問分野の名称とwikiからの引用が示されている。
この取り上げた学問分野と、4つの流れに図書分類を対応させた学問分野が一致しない理由を述べる必要がある。それは、現代において主要な根拠として取り上げることで多くの人に説得力を持つ学問分野が自然科学系に偏っているからだ。

個人を主体とした実際の生の有り様としては、いちいち科学的な検証をしながら行動しているわけではない。その意味で、区分に該当するものとして取り上げた分野は、その区分に関連する学問分野の中でも特に検証と理解のしやすさに比重を置いたものと考えて欲しい。尚、取り上げた学問分野について筆者は全くの素人であるため、関連しそうだと考えたものに過ぎない点にも注意して欲しい。

実際の生の有り様としては、概ね4つの流れで分類された学問分野で明らかにされる現象によって人の生は形成されていると言って良い。このような科学的な視点と実際の生の有り様の違いは強調しなければならない。

参考までに4つの流れと図書分類法の対応関係について示す。
横の行きの流れ(←)自然科学
横の帰りの流れ(→)歴史・工学・芸術・言語・文学
縦の行きの流れ(↑)哲学・思想・宗教・心理学
縦の帰りの流れ(↓)社会・産業
(2022/11/26)

図書分類法に基づいた10の類に4つの流れを割り当てると以下のようになる(4つの流れの記号を使用)

10[哲学・思想・心理学・倫理・宗教]〜(↑)
20[歴史・伝記・地理・地誌・紀行]〜(→)
30[社会科学・政治・法律・経済・財政・統計・社会・教育・民俗学・国防・軍事]〜(↓)
40[自然科学・数学・物理・化学・天文学・宇宙科学・地球科学・地学・生物科学・一般生物学・植物・動物・医学・薬学]〜(←)
50[技術・工学・建設・機械・電気・兵器・金属・化学工業・製造工業・家政学・生活科学]〜(→)
60[産業・農業・園芸・畜産・林業・水産・商業・運輸・通信]〜(↓)
70[芸術・美術・彫刻・絵画・写真・工芸・音楽・舞踊・演劇・映画・スポーツ・諸芸・娯楽]〜(→)
80[言語]〜(→)
90[文学]〜(→)

数えると(↑)が1つ、(←)が1つ、(→)が5つ、(↓)が2つになる。これは図書の目的は主に「何かを文章として遺すこと」であるため当然の傾向と言える。

技術・工学と自然科学は4つの流れにおいて対になる方向(→←)になっている。
技術・工学は↓の区分が意味する未知の未来への働きかけそのものではない。一見区別がつきにくいが、→の「歴史」という基礎定義を広く解釈したものが技術・工学になる。これは人が自然の原理を利用することにより発想した技術に関する学問分野だ。
人が発想して技術と呼べるに至った知識は、遺物や作品と同列の歴史の一部に区分されるという考え方だ。それをどのように運用するかの「方法」についての分野である産業とは区別されるのだ。

上述のような技術・工学の学問的な性質に対して、何かを為すための発想をいかに実現するかについて、技術と呼べるまでに確立していない業についての学問が産業だ。(ある知識を技術と呼べるかどうかの境目も非常に曖昧であるが、科学的な検証が可能かどうかが境目になるのだろう)
技術を利用して未知の問題や課題を解く道筋・方法を問う学問が産業である。産業の技術・工学との違いは直接的な目的がある点だ。

補足:教育が(↑)の心理に区分されない理由は社会における一人前の大人に育てる方法に関する分野であるからだ。(2022/11/24)

図書分類表と42区分の対応表について

図書分類法の10の類を4つの流れに関連のある4つのまとまりに分類する。
そこで、10分類に該当する学問分野はそれぞれ何を明らかにする目的があるかという問いが大事になる。

例えば歴史は過去の出来事を知ること。物理や科学は法則を見つけて未来の予測可能性を高めること。政治、経済、産業は今現在の課題について、実際にどのようにするかの方法論だ。では、心理学や哲学は何を目的とした学問か?

それは「現実」を明らかにするものではないか。動かし難いありのままの事実に向き合う学問とも言える。心の有り様は、私たちが捉える現実を写し取ったものとして現れる。
現実は常に側にありながら捉え所のないものだ。そして現実は過去、今、未来と繋がっているもの。あるいは過去、今、未来が合成された形で現れるものだ。

上述の過去、未来、今、現実の4つの要素を4つの流れに当てはめると以下のようになる。
・縦の行きの流れ(↑)は現実
・横の行きの流れ(←)は未来
・縦の帰りの流れ(↓)は今
・横の帰りの流れ(→)は過去

この4つの区分に図書分類表の10分類を振り分けることによって、各学問分野が明らかにしようとする目的との対応関係が明らかになる。
例えば、縦の行きの流れ(↑)に該当するのは動かし難い現実に「なぜ?」と問いかけて、理由や要因を追究する学問だ。その研究対象は「現実」なのだ。(2022/11/23)


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です