[16] 身体外の物質の様態


身体の外の個人に関わりの深い物質群

目次

区分[16]の定義・関連する学問分野

地球上にある様々な分子の合成によって生物個体は成り立っている。
生命の定義のうち分子構造の特徴に着目した観点から、生命の仕組みを分子の働きから読み解く学問分野がある。生命が成立する過程を分子単位で記述しようとする試みは生物学で行われている。
個人の身体を成立させる分子の働きを示す区分(19)に対して、その周囲の分子の有り様を示す区分[16]が情報的環境(D)の外的環境だ。
区分[16]の具体例を以下に示す。
・母体の働きによって形成される誕生前の生命の周囲環境。
・身体を構成する分子の素となる環境中の他の生体の働き(食料となる他生物の活動)
・感覚器で感知可能な環境の構成分子の挙動(視覚・聴覚・嗅覚情報として感知)

この区分に該当する分野は化学が妥当だろう。(2022/11/22)

[wikiより「化学」とは、さまざまな物質の構造・性質および物質相互の反応を研究する、自然科学の一部門である]

情報的環境の外的環境の要素にあたる区分[16]は、生命分子で形成された人の個体の外側に存在して身体に関わりのある物質を分子単位の現象として捉えるものだ。(2022/11/27)

区分[16]と生物的環境(C)の関係

概要図を見ると、入れ子の構造で情報的環境(D)の外的環境が生物的環境(C)の内的秩序に含まれる点に疑問が浮かぶ。
情報的環境(D)の外的環境がそんなに狭いはずはない!人は生物以外の物質や宇宙まで知ることができるじゃないか。というもっともな指摘と疑問だ。
これについて説明をする。情報的環境(D)の外的環境で捉え得る情報とは、あくまで身体の生物的構造による感覚器を通して得る情報という「限られた」ものであることを示している。人の認知能力の本質と限界を示すもので、それは意外に狭いのだという事実が図上で示されていることになる。

感覚器を用いずに現象として身体で受容していることも情報的環境の外的環境には含まれるが、脳の働きを通じた行動に対しては間接的な影響力に限られる点で区別される。例えば生命活動そのものを成り立たせるのに必要な温度などの条件に伴う反応や分子の働きは感覚器で受容する情報とは区別される。

人の身体感覚は何のためにあり、何のために機能を発達させて備わっているのかを考えよう。地球上で自然環境の中で生活して生き延びるためだ。

周囲に存在する情報から食料となる生物を選り分けるために、それ以外の無関係な事象や危険なことを識別する必要がある。情報的環境(D)の外的環境はそのようなものとして進化の過程で発達して身体に備わったものだ。対象の「ありのまま」を捉えているのではない。

つまり人は生物的な身体機能を用いて、生物と非生物を選り分けるために発達した機能を通して周囲の事象を捉えている。生来に備わった感覚器を用いて受け取るという意味では、森羅万象をありのままに受け取っていると考えても良いかもしれない。
しかし身体機能の発達は偏った受容能力しか私たちに与えてくれない。だから生物的環境(C)の内的秩序に情報的環境(D)が含まれているのだ。

そうした限られた感覚器の能力を通してではあるが、人はこの情報的環境の外的環境から多くの情報を得る。私たちが日常的に目や耳などを使って情報を得る営みがそれだ。(2022/10/7)

情報的環境(D)と人的環境(F)の関係

人的環境(F)の外的環境は人類史においてどのような状態を起点として時間に伴う変化をしてきたのか?
それは集団の成員の間で事象に対する認知を共有することから始まった。最初は自然現象がその共有される対象だったはずだ。

個人が周囲の事象を感覚器を通じた五感で受け取るのが第1段階。
そして第2段階、その五感で捉えた事象と経験上で関連する別の事象に認知が結びつく。一つの認知に影響されて別の認知が引き起こされるのは、連想という方が分かりやすいか。この段階での個人の内面では言語や合図を介さずに連想が起こるので、個人の認知内の現象として完結する。
そして第3段階は集団の成員である複数の個体が、ある対象を五感で認知した場合に概ね共通の連想をすることだ。例えば原始人類にとってのライオン=怖い敵という連想はほぼ全ての成員にとって共通のものであったはずだ。

(この認知の連想を起こすきっかけとなったのは、情報的環境(D)の外的環境に存在する物質の挙動のうち感覚器で受容した内容だ。
これが情報的環境(D)の外的環境の区分[16]定義の一つと言える。他にも親兄弟や配偶者などの親密な関係の他者、捕獲されて食料の状態になった他生物を形成する物質の挙動もこの区分に含まれる)

続く第4段階では、情報的環境(D)の内的秩序である身体の運動によって他者の感覚に働きかける合図(主に視覚と聴覚に)という行為を起こすことで新たな作用が起こる。

何かを指し示し合図を行う。その合図に対する認知が環境にあるものを見て感じたことと結びつく。
この合図は環境を認知することの代替となり、それは集団内で共有される「認知上のもの」として環境要素の一つになる。こうした作用を起こすのが情報的環境(D)の外的環境であり、ここでいう合図とは主に言語のことだ。
その合図は脳内の環境要素である人的環境(F)の外的環境において言語として認識される。人的環境の外的環境では言語と物質の絡み合った認知の体系として形成される。(但し言語の働きが人的環境の外と内のどちらに区分されるかについては更に深い考察が必要だ)

同じ遺伝子に基づく人が五感で捉えられる現象は、その感覚器の機能の共通性の範囲内であれば理論上は全てを共有できる可能性を持つ。

しかし、それは合図である言語の表現力の限界に阻まれる。更に個人ごとの身体の違いは認知機能の違いを生み出す。
この二つの制限を受けるため、言語の体系の表現力によって環境認知を代替する精度は確かではないが、何とか学問や思想を発展させて高度な価値観を共有する力を高めてきた。
最初は自然環境から、物的環境、生物環境、肉体的環境、人的環境、心的環境まで認知可能な要素を示す認知上の代替物である言語と文字情報は実際の体験を通じて内容を深めながら発展してきたのだ。(2020/7/21)

言語の機能について

言語の機能についても掘り下げる必要がある。
人が周囲の離れた所にある事物や人に働きかけることを通じて、期待した望ましい結果を引き出すために行う一連の行動について述べる。
望んだ行動を達成するための準備段階として、行動の主体と対象の中間的な要素に働きかけることがある。それは目的達成に向けた間接的な導きの効果があり、望ましい結果への助けとなる。この目印の役割を果たすのが言語である。
回りくどい説明になったが、物事を指し示す言語の役割の全てがこのような位置付けで立していると言える。

図で示すと以下のようになる。

行動の主体~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~→対象

行動の主体~~~~~~~~~~→・~~~~~~~~→対象

行動の主体~→・~→・~→・~→・~→対象

~が働きかけの内容で・が言語の役割だ。目印の・が多いほど対象に辿り着きやすくなることを示している。

上図における矢印は、対象に働きかけることで得られる望ましい結果に導くための行動の内容と量を示している。
この道筋は本来は個人の経験を通して身につくものだが、他者であっても共通の言語を用いることで同じ経験を経ずに同様の成果を得る道筋を内面に取り込むことができる。

・が多いほど他者は再現性が高く正確で速く望ましい行為を起こせる。(2022/6/24)

関連する項目

[16]に関連のある42区分を以下に示す。
⇦17 化学物質の影響と受容
⇧15 個人の誕生と発達の背景

[1]に関連のある用語について述べたページを以下に示す。
情報的環境(D)
外的環境

考え方全体の枠組みについて最初から述べたページを以下に示す。
4つの流れ理論


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